CPUと歩留まり
2020-11-26
Semiconductor manufacturing is similar to agriculture and fisheries.
前回は、Apple SiliconことM1チップとM1Xチップについて考えました。現在M1チップはMacBook AirのGPUのコア数(7 or8 core)を除いて、1つのSKUしかありません。コア数やクロックの違いによるオプションが存在しないのです。これは半導体製造においては結構な非効率です。半導体は工業製品ではありますが、よく農業や漁業に例えられます。半導体製造では同じ設計図で同じように作っても最速クロックで動く高品質の製品ができる事もあれば、客に出せない不良品になる事もあるからです。後者のようなB級品は値段を安くして売っています。CPU製造において複数のSKUを用意することは昔からの定石です。
CPUメーカーがラインナップを複数用意する方法は3つあります。
1つ目は動作クロックです。同じように製造しても高いクロックで動作するダイと低いクロックでしか動作しないダイが生まれるため、高いクロックで動作するものを高価格で、低いクロックでしか動作しないものを低価格で販売します。
2つ目は設計上のコア数です。8コア製品を売りたい場合、コアを8個入れた設計をします。12コア製品を作りたい場合は12コア用の設計をします。当然ながら8コアより12コアのほうがダイサイズは大きくなり製造コストは上がります。8コア製品をたくさん売りたいなら8コア製品を初めから設計して8コアを作ったほうが儲かります。12コア製品として作ったものを4コアを無効化して8コア製品として売ったのでは儲かりません。
3つ目は不良品に値段をつける場合です。12コアで設計した製品は当然、高い値が付く12コアで売りたいですが、残念ながら不良品で12コアで動かない場合があります。その場合は8コアなら何とか動くのであれば捨てるよりはマシということで8コアで売ります。8コアの設計で作ったものより原価は高いですが捨てるよりはマシなので8コア製品として販売します。
大型のダイになるほど1枚のウェハから取れる数は少なくなるため、欠陥のあるダイでも低クロック、あるいはコア数の少ないモデルとして販売する必要があります。
現在、実質1SKUしか存在しないMシリーズチップも将来はIntel CPUやAMD CPUのように複数SKUを用意していくことになるのではないでしょうか。